【スプラトゥーン2】悔やんでも悔やみきれないこと【イカマクラ15】

 インクに潜りながら、こう考えた。
 攻めに攻めてもしのがれる。守りに徹せど崩される。裏取りしてたら全滅だ。とかくにガチマは勝ちにくい。
 勝ちにくさが高じると、安い所で戦いたくなる。どこで戦っても勝ちにくいと悟った時、ツイートが生れて、ブログが出来る。

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 悔やんでも悔やみきれないとは、まさにこのことを言うのだろう。どんなに悔やんでも悔やんでも過ぎ去った時を戻す術はない。あとから落ち着いて考えれば、ああすれば良かった、こうすれば良かったといくらでも思いつくのに、何故あの時、私は……。

 ガチエリアがS+6になり「ようやくガチエリアもS+の後半戦に入る」と思ったそのあと、数日でS+4まで落ちてしまった。
「もう無理だ。スプラトゥーン1の発売日である2015年5月28日から今日までの3年半でこの程度の強さにしかなれなかったのに、あといくらの時間を費やしたとしてもウデマエXになぞたどりつけはしない。時間の無駄だ。諦めた方がいい」
「なら、どうする? ガチマは諦めてナワバリだけしかしないのか? ガチマをするならウデマエで分けられる。勝ち続ければウデマエXだし、負け続ければSだ。諦めたとか、諦めてないとか、こちらの気持ちはおかまいなしだ。それなら『諦めた』と言うことになんの意味があるのか」

 自問自答するが何も答えは出ない。そんな中、ガチエリアの時間は終わり、ガチホコの時間となる。ガチホコはS+9まで来ていた。しかも、あと一回勝てばOKラインという所までメーターがたまっていて、ヒビはまだ一個しか入っていない。これなら即座に降格となることはなさそうだ。ガチエリアが二段階降格し、ここ何日もずっと調子が悪かったような気持ちになっていたが、昨日のガチホコは調子が良かったことを思い出す。
「昨日の私よ、ありがとう」

 ガチエリアはどうしようもなかったが、ガチホコは一転、絶好調だった。OKラインをやすやすと超えて、みるみるゲージが増えていく。

 そして、あと二回勝てば憧れのXというところまできた。ヒビはまだ一つ。少しくらい負けてもまだまだ大丈夫だ。
「負けても大丈夫」その気持ちが油断を呼んだのか、ここにきてまさかの三連敗。二つ目のヒビが入り、三つ目のヒビまでもが入る。

 その次の試合でなんとか一勝。連敗が続くのを食い止めることが出来た。

 ヒビが入ったところだから、あと一回は負けても大丈夫だろうとは思うが、一回負けただけですぐに四つ目のヒビが入って振り出しに戻ることもあるので決して油断は出来ない。
 とはいえ、これであと一回勝てばX。頭の中は、段々とそのことで占められていく。

 ところが次の試合はホコに触れることすら出来ずに惨敗。「あるある。『あと一回』という時に突然相手が強くなるパターン」と思う余裕な心と同時に「これで割れて最初からになったら、次またここまで勝ち続けることは出来そうにない」と焦る気持ちが存在した。

 クマサンの言葉が頭に浮かぶ。
「気をつけなさい…希望が絶望にひっくりかえるのはいつもこういうときだ」

 最悪の場合、ここで四つ目のヒビが入ることもある。まだ割れないでまだ割れないでまだ割れないでまだ割れないでまだ割れないで……。

 結果は……メーターが震えただけでヒビは増えず。まだ、この状態であと一戦できる。しかし、これで次負けたら確実に割れる所まで追い詰められたことになる。

 安心からか、次のバトルを思っての緊張からか、手が細かく震えていた。手の震えがおさまるように、少し休憩してお茶を飲む。

 まだ三十分程はガチホコの時間は残っていた。勝てばXだが、負ければS+9をまた始めからだ。どちらに転んでもその先を考えると疲れること必至。そのため、結果がどうあれ、これが終わったら今日は一旦ガチホコをやめよう、と思っていた。だから、あと一戦できる時間だけあれば良かった。たっぷり休憩の時間をとることにした。

 コップ一杯のお茶をゆっくりと飲みきる。手の震えは少し残っていたが「ただの武者震いだ。バトルに影響はない」と休憩を終えた。

 そして始まる本日のガチホコ最終戦を始める。場所はバッテラストリートだった。

 このステージは、ゴールに向かう経路が大きくわけて二つある。
 左側の細い路地裏のようなところを通る経路と、右側の大きな坂を二つ登る経路だ。

 開始一分ほどで、味方側の路地裏にホコを持って入り込まれた。細道の真ん中を過ぎた辺りで止めることが出来たが、残り43までカウントは進んでいる。
 残り43。微妙な数字だ。数字的には逆転は十分に可能そうだが、路地裏の経路で行くなら、細い坂道の登り口位までは行かないといけない。大きな坂の経路なら二つ目の坂の手前位まではいかないといけない。

 その後しばらくはどちらも相手の路地裏からのゴールを目指すも、路地裏入口の小さな坂道を登りきることすら出来ずにいた。
 お互いに鉄壁の守りを見せたまま残り一分強となった。残りカウントは55対43で負けている。
 残り一分しかないんじゃ逆転はもう無理だな、と諦めかけた時、チャンスが訪れた。

 味方側の路地裏の入り口でホコを持った敵を倒し、味方のスパッタリー・ヒューと二人でホコバリアを割る。その爆発でもう一人倒せた。生きている残り二人の敵は近くには見当たらない。スパッタリー・ヒュー以外の味方も近くにはおらず、恐らく敵側の路地裏で攻防戦を繰り広げているのだろうと思われた。
 もしそうであるなら、路地裏には行かず、坂道を二つ登る経路でいった方が良いだろう。スパッタリー・ヒューも同じ判断をしたらしく、真っ直ぐに坂道に向かう。私はそれについて行く。試合時間は残り一分。その判断が正しかったかどうかは一分以内にわかる。

 一つ目の坂を登り切った所では、敵の影はまだなかった。ただ、地面は敵インクの方が多くなる。スパッタリー・ヒューが道を作ってくれてはいるが、敵と対面した時に、動き回れるだけのスペースはない。泳ぎながら敵インクを右に避け左に避け、あるいは飛び越え、二つ目の坂を目指して進んでいく。

 二つ目の坂に差し掛かったところで、カウントが逆転した。それと同時に登り切った先の右奥の方から、敵が二人近づいてくるのがちらりと見えた。さっき倒した二人がリスポーンして、やって来たのだろう。

 逆転出来たが、もしここでやられたら残り一分間を守り続けることが出来るだろうか。「残り一分しかない」が「残り一分もある」に変わる。可能なら1でも2でもカウントを進めたい。

 当然スパッタリー・ヒューも敵には気づいており、ゴールまでの道を塗り終えると右に曲がって迎撃に向かう。
 ゴールまでの道は既に出来ている。このまま、脇目も振らずにゴールを目指すか、ホコでスパッタリー・ヒューの援護をするのか。選択肢は二つ。

 いや、違う。右から二人敵が来て、あと二人はどこだ? 本当に敵側の路地裏にいたのか? 画面上のイカの生死を記すイカマークを見る余裕がない。敵インクに誰か潜んでいないか瞬きもせずに探しているところだ。動いたあとはないか、飛沫は上がらないか。

 ゴール付近で待ち伏せをしているということはないか? それならゴール付近にガチホコショットを一発撃っておいた方がいいということになる。

 しかし、後ろから敵が迫っている可能性もある。それなら呑気にガチホコをチャージしていたら追いつかれてしまう。無論、来てるかどうか後ろを振り返る余裕なんてあるはずもない。

 結局、もっともシンプルな動きを選んだ。右からの敵はスパッタリー・ヒューを信じて任せ、残り二人はここにいない味方二人が引き付けてくれていると信じて、私はホコを持ってゴールを一直線に目指す。

 二つ目の坂を登りきると、谷間があってゴールが見える。このルートのいいところは坂を二つ登り終えるとゴールの盛土のてっぺんと同じ高さまで来るところだ。盛土を登らなくても谷間をぴょんと飛びこえればゴール出来る。
 ゴールの周りがきちんと塗れていなくて、上手く登れず、地面に落ちた金魚のようにぴょこぴょこぴょこぴょこしている時ほど焦る瞬間はない。

 最後の平地をインクに隠れて突っ切っていく。どこからもインクは飛んでこない。谷間にたどり着く。ジャンプする。ゴールの上に乗っかる。
 そして、私の分身はホコをゴールに押し付けた。ホコから波紋が二重三重に拡がり、ホイッスルが鳴る。

 勝った……。

 いつの間にか手の震えは止まっていて、その代わりに心臓の鼓動のリズムがいつもよりもはるかに早くなっている。

 四つルールがあるうちのまだ一つ目とはいえ、ようやくたどり着いたウデマエX。もちろん、この上なく嬉しかったのだが、一つだけ悔やんでいることがある。

 最終戦、最後の三十秒の動画保存をしなかったことだ。

 残り一分を切ったところで、仲間の力を借り、自らホコを持って逆転ノックアウトだなんて、出来すぎなくらいの感動の名場面だったのに。きちんと動画保存しておけばその感動を何度でも味わうことが出来たのに。「-初めてウデマエXに昇格しました- ロビーにもどります」が出たところで撮影ボタンを長押しするだけで良かったのに。
 これだけはもう悔やんでも悔やみきれない。

 なにはともあれ10月28日、私はついにガチホコがウデマエXになった。
 奇しくもその日は私の誕生日。スプラトゥーン2からの思いもよらぬサプライズプレゼントとなった。

2 COMMENTS

もん

ROM専でしたが、いつも拝読していました。
ウデマエXおめでとうございます!
いつも楽しませて頂いてますが、いつも以上に読み応えのある、とても素敵な記事でした✨

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げいむ すきお

 ありがとうございます。
 ついに初めてのXです。とはいえ、一つ目ですし、他のルールはどれもまだS+の前半で足踏みをしていて、まだまだ私のXを目指す旅は始まったばかりです。
 
 動画を撮り忘れた分、しっかりと書いて忘れないようにしておこうという思いに、ウデマエXに上がった喜びを乗せると、思う以上に筆が走ってしまいました。長いばかりの拙文をご高覧ありがとうございました。
 
 Twitterを見ると、もんさんをはじめ、どなたもこなたも全ルールXという人ばかりで、早くそこに仲間入りしたいものです。

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