小中学生達は夏休み真っ只中の8月だが、7月のベストセラーにあれだけ入っていた青少年読書感想文全国コンクールの「課題図書」がごっそりと消えた。課題図書は夏休みに入る前に買っておくものなのか、全国の図書館や小中学生の集まる集会所的な施設が買っていただけなのか。私は夏休みの終わりがけに慌てて読書感想文が書きやすそうな書籍を買って読むタイプだったため、課題図書は8月のランキングに入ってくるものだと思っていたがどうやらことはそう単純な話ではないらしい。
第161回芥川龍之介賞受賞作品が10位に辛うじて入ってきている。わかりやすい面白さのある小説なので、芥川賞と言う権威を背景にもてば口コミでどんどん売れそうな作品だと思う。[/prpsay] [toc][toc label=”2019年8月の月間ベストセラー(日販調べ)”]
01位『大家さんと僕 これから』矢部太郎
矢部太郎作のコミックエッセイ。「大家さんと僕」の続編で完結編。作者の矢部太郎の本職はお笑い芸人。1作目は第22回手塚治虫文化賞短編賞を受賞している。大家さんと矢部太郎の交流を描いた作品。泣いて笑える作品らしい。
02位『M 愛すべき人がいて』小松成美
小松成美著のノンフィクション作品。著者の小松成美は人物のルポルタージュを得意分野とするノンフィクション作家。浜崎あゆみが福岡から上京してきて歌手として成功を収めるまでの物語。「BOOK」データベースによると”博多から上京したありふれた少女・あゆを変えたのは、あるプロデューサーとの出会いだった。やがて愛し合う二人は、“浜崎あゆみ”を瞬く間にスターダムに伸し上げる。しかし、別れは思いのほか、早く訪れ…。歌姫誕生に秘められた、出会いと別れの物語。 “とのことだ。随分芝居がかった書き方だとは思うが、そういうのを好む層に向けての書籍なのだろうと思うと納得もする。タイトルは当然、浜崎あゆみの代表曲「M」の歌詞からだろう。
03位『もっと ざんねんないきもの事典』今泉忠明
今泉忠明著の生物事典。7月に引き続きランクイン。NHK教育テレビでショートアニメ化もされている「ざんねんないきもの事典」シリーズの最新刊。このシリーズは、これまでに「ざんねんないきもの事典」「続 ざんねんないきもの事典」「続続 ざんねんないきもの事典」と出版されていて、今回で4作目。このまましばらくはランク入りし続けるだろうと思われる。
子供向けだが、大人が読んで楽しめるし、大人が読んだ上で子供に読ませたいと思う作品だと思う。
04位『時間の花束 Bouquet du temps』三浦百恵
三浦百恵作のキルト作品集。作者の三浦百恵は、かつてはアイドルとして一世を風靡した山口百恵の今の名前。三浦友和と婚約を発表すると同時に芸能界を宣言し、その後、いつからかキルト作家といて活躍している。この書籍では、家族らとのエピソードとともにキルト作品を紹介していく。
05位『天気の子 角川つばさ文庫』新海誠
新海誠著の児童向け小説。角川文庫の「小説 天気の子」が大人向けなのに対し、挿絵つきで小・中学生向けに読みやすく編集した児童書版がこの角川つばさ文庫版。子供向けでないシーンは削除され、うまく編集されているらしい。
06位『一切なりゆき 樹木希林のことば』樹木希林
2018年9月15日に他界された女優樹木希林の生前の言葉を集めた新書。2018年12月20日に発売して以降、1月、2月、3月、4月と1位、5月はおしりたんていに1位を譲ったものの6月には1位に返り咲き、7月になってざんねんないきもの事典に1位を奪われ、今月は6位まで落ちた。ようやく勢いが衰えてきたとはいえ、まだまだ強い樹木希林。
07位『おしりたんてい ラッキーキャットはだれのてに!』トロル
トロル作・絵の児童書の第10弾。8月22日に発売されたばかり。9巻がまだランキングが残っているうちに10巻が登場。表題作「ラッキーキャットはだれのてに!」と「おもいでの まねきねこ」の2話収録。
ラッキーキャットは、おしりたんていの事務所があるビルの一階にあるカフェの名前。そのラッキーキャットが舞台のお話。表紙にはおしりたんてい、ブラウンのわきに、妙に色っぽい恰好をしたすずと、マフィアのボスのような姿をしたマスターが描かれている。
08位『おしりたんてい かいとうとねらわれたはなよめ』トロル
トロル作・絵の児童書の第9弾。5月、6月、7月、8月とランクインし続け、ずっと第9弾と書き続けてきたが、公式には第8弾のようだ。
おしりたんていファイル(7)「おしりたんてい みはらしそうの かいじけん」の次に出版された「おしりたんてい カレーなる じけん」は初映画化される原作本として特別枠らしい。
今では普通に買えるが、カレーなるじけんは2019年1月1日(火)から3か月間だけ全国のセブン‐イレブンとセブンネットショッピング先行発売されるという特別扱いだった。しかもその1話しか収録されていなかったり、公式サイトを見てもおしりたんていファイル(101)となっていたりする。
そして、その次に出版されたこの「おしりたんてい かいとうと ねらわれた はなよめ」がおしりたんていファイル(8)となっているため、正確には第8弾と書くべきところなのかもしれない。
09位『続 わけあって絶滅しました。』今泉忠明
今泉忠明著の生物図鑑。わけあって絶滅しましたの続編。 3位のもっと ざんねんないきもの事典と同じ作者。絶滅した生物視点で、自分たちが絶滅した理由を独白する形式で、ユーモアたっぷりに見開きで解説していく。ざんねんないきもの事典と同じく、ただ面白いだけではなく「絶滅した年代」「大きさ」「生息地域」など詳しい説明もついている。
10位『むらさきのスカートの女』今村夏子
今村夏子著の小説。第161回芥川龍之介賞受賞作品。主人公の女は、近所でみかける「むらさきのスカートの女」が気になってしょうがない。仲良くなりたいと思い、色々策を考え実行し成功はするが、直接声をかけることは出来ず仲良く出来ないまま。
主人公は「むらさきのスカートの女」がいかに変わり者かを詳細に説明してくれるのだが、その詳細さはむしろ主人公の方の異常さを感じさせる。
変わり者と一言で言っても、変わり者ゆえに周囲の人間の話題になりやすい場合と、変わり者ゆえに周囲の人間に話題にするのをさけられる場合とがあると思う。叩かれやすい変わり者と、腫物を触るように扱われる変わり者だ。本谷有希子の書く作品の主人公は前者で、村田沙耶香の書く作品の主人公は後者だと勝手に思っている。この作品の主人公の場合は後者だ。
書評的なものを書いたので、読もうかどうしようか迷っている人は参考にして欲しい。
『むらさきのスカートの女』今村夏子【ネタバレなし】怪物は誰だ。
最後に
[prpsay img=”http://gamesukio.com/books/wp-content/uploads/2019/04/IMG_4369.png” name=”げいむすきお”] かいけつゾロリの原ゆたか、おしりたんていのトロル、ざんねんないきもの事典の今泉忠明。この三人はきっと今の世代の小中学生の心にはずっと残っていて、大人になってから懐かしまれるんだろう。私の世代だとズッコケ三人組の那須正幹や少年探偵団の江戸川乱歩がそれにあたる。ズッコケ三人組シリーズが終了した後は、三人組が大人になったズッコケ中年三人組が出版され、さらにその後にあたるズッコケ熟年三人組まで出版されている。
同じ様に今の小中学生が大人になったころ、かいけつゾロリの子分イシシ、ノシシが大人になったあとの話や、おしりたんていの助手ブラウンが探偵になって事件を解決する話なんかが出たら面白いだろうなと思う。 [/prpsay]