古くからの友人が家を買ったというので訪ねていった。
「はいれるようにしてある」と言っておったため、吾輩は勝手に邪魔をさせてもらう。
決して広くはないが、綺麗に片付いておる。
誰もおらぬだろうとは思いながらも、一応奥に声をかける。当然のように返事がない。念のためと思い、ついたての奥を覗く。
タオルのようなものがかかっておるから、ここは風呂かと思ったが違った。
では、もう一方の方だろうかと思い、そちらを覗いたらまさに風呂であった。
普通はタオルのかかっておる方を風呂だと思うのである。ついたてが逆なのではないのかと思ったが、何にせよ誰もいなかったのである。
それにしても、誰も風呂に入っておらずに幸いである。もし、みはやが風呂に入っている最中であったら、驚かせてしまう所であった。ましてやみはやは女性である。あらぬ誤解をうけてしまう所であった。
女性がゆっくりと風呂につかっておるところをこっそりと覗くような卑劣な人間であるかのように思われるところであった。
家主の帰りを待っていても一向に現れない。暇をもてあますばかりであるため、吾輩は風呂に入ることにした。
なかなか良い湯加減である。ゆっくりと湯につかっておったため、魚介類系の良いだしがとれたのではないかと思い、風呂の湯を一口すすってみる。
うむ。不味い。
風呂に入ったは良いものの、考えてみれば体をふくものがない。向こう側のついたてに、タオルがかかっておったのは分かっておったが、さすがの吾輩でも女性の家のタオルを勝手に使うのは気が引ける。
普段は他人の家でも何のためらいもなく、勝手に箪笥を開けたり、ツボの中をのぞいたりするのであるが、知り合いの女性の家となると、多少気を使うこともなくもないのである。
そのため、吾輩は暖炉で体を乾燥させることにしたのである。暖炉にたどり着くまでに滴がべちゃべちゃと床にたれておったかも知れぬが、どうしようもないことであるため気にせぬことにした。
髪は特に念入りに乾かすのである。
多少熱いが良く乾いた。
しかし、一向にみはやは帰ってくる気配をみせぬ。
帰ってきたら驚かせてやろうと、ベッドの下に隠れ「さぁ、寝よう」としたところで突然でてくる練習をする。
それでもまだ帰ってこない。ベッドの下にいるのも限界である。
すっかり退屈してしまった。吾輩は座布団を布団代わりにし寝て待つことにした。
それからどれくらいの時間がながれたのであろうか? 遠くから声が聞こえてくる。
「起きろ!」
良い気持ちで寝ていたところを無理やり起こされる。
「なんで、人の家で裸になってるんだよ!」
一人で裸になる理由はそう多くはあるまい。考えればわかるようなことをわざわざ説明をするのは面倒であるが、戦闘で汗をかいた帰りであるため、風呂に入って汗を流していたことを伝える。
納得をしたのかしないのか、それ以上はなにも言われなかった。
その後、料理を振る舞ってくれたのであるが、なぜかスプーンやフォークの類を用意してくれず、吾輩は食べるのに苦労した。
何か彼女に悪いことをしたであろうか?
最後に彼女側からの写真である。
吾輩の勇姿が良く写っておる。
いやいや!
コレただの不審者だよお!
むむ。
気になることがあったなら通りすがりでも、
つっこまずにはおられない娘であろうか?
違ったらすまぬ。
けして不審者ではないぞ。
みはやに招待されておるのであるからな。
それに吾輩の行動をふりかえってみるがよい。
不審な行動はなに一つないのであるぞ。
例えば自分が家に帰ってきたときのこと考えてみるがよい。
まず、家族のだれかが先に帰ってきていないか部屋を確認し、
疲れを取る為に風呂に入り、身体を乾かし、
服を着る前に少し遊んで、つかれて寝てしまっただけのことである。
それくらいのことは誰でも経験があるであろう?
あえておかしな点を無理に挙げるとするならば、
これが自分の家ではなく友人の……それも女性の家であるというただその一点だけであるな。
いやいやいや、最後の写真は
明らかに自宅に帰ったら
変★態と遭遇、の図やろw
もしここにうつっておるのが、げいむすきおでなかったとしたら、
あるいはそういうことができたかもしれぬ。
しかし、ここにうつっておるのはげいむすきおである。
「自宅に帰ったら、勇★者と遭遇の図」としか思えぬ。