【TWELVE MINUTES】死んだらループ。部屋を出てもループ。簡単操作のループものサスペンススリラー。

Twelve Minutes(XB ONE/X|S版)
販売元Annapurna Interactive
開発元Luis Antonio
発売日2021年08月19日
価格2,900円(税込)
その他GAME PASS対応
Twelve Minutes(Switch版)
販売元Annapurna Interactive
開発元Luis Antonio
発売日2021年12月07日
価格$24.99
その他海外DL版のみ。海外アカウントを持っていれば買えます。
Twelve Minutes(PS4/5版)
販売元Annapurna Interactive
開発元Luis Antonio
発売日2021年12月07日
価格$24.99
その他海外DL版のみ。海外アカウントを持っていれば買えます。
Twelve Minutes(Steam版)
販売元Annapurna Interactive
開発元Luis Antonio
発売日2021年08月19日
価格2,700円(税込)
その他

げいむすきお
げいむすきお

 このゲームのレビューをネットで探すと「12分間をループするゲームだ」と説明されていることが多い。最終的には確かにその通りなのだが、正確ではない。どちらかと言うと「たどり着けない2分間を見つけるために10分以内のループを繰り返すゲーム」だ。あれこれ言うとネタバレになるため、詳しくは書けないが、たどり着けない2分間はラストステージみたいなもので、そこまで行けたら「あとはラスボスを残すだけ」みたいなところまで来ている。

 

 チュートリアルを終えて、アパートの自室に入ったところを0分とすると、5分近くのタイミングで警察を名乗る男が訪ねてくる。その男に主人公は妻とともに拘束される。そうなると何をすることもできなくなり8分を待たずして殺されてしまう。死ぬと自室に入った瞬間に戻り、0分からの再スタートとなる。

 まずはこの状態をどうにかすることが最初の目標となる。

 

 ループから抜け出すためにあれやこれやとすることがゲームのメインとなる。行動範囲は3Dで構築された3LDKの自室のみ。部屋を上から見下ろし、主人公を操作する。コップに水をついで妻に渡したり、冷蔵庫に入っているケーキをテーブルに並べたりと、出来ることが多すぎて最初は何から手を付けて良いかわからない。しかし、段々と要領が分かってくると、出来ることが多すぎると思っていたあれやこれやが、ぴたっ、ぴたっとやりたいことにはまっていく。そうしたあれやこれやの末にわかった事実でストーリーが形作られていく。

 

 ストーリーのジャンルとしては、サスペンススリラーであり、話は二転三転とする。ただし、最後は少しもやもやした感じで終わる。日本の2時間ドラマのように勧善懲悪がはっきりしていたり、ハリウッド映画のように事件がすっきり解決したりはしない。含みをもたせた終わり方はサイコホラーに近い。

 

 ラストで「何が起こっていたのか」はある程度のところまで明確になるが、主人公の主観を通してしか世界を見られないため、登場人物たちが「結局今どういう状態なのか」はわからない。しかも、あまり後味は良くない。そのはっきりしない後味の悪い終わり方もこの作品の魅力の一つとなるので、そういったエンドが苦手な人はやめた方が良いかもしれない。逆に、物事をはっきり断じず、暗い影と不気味な謎を残してくれたまま終わる方が、色々と考察が出来るし、プレイヤー同士で語り合えるから好き、と言う人ならぴったりはまると思う。 

どこのゲーム?

 販売元は Annapurna Interactive
 開発元は LuísAntónio

Annapurna Interactive

 アメリカの映画会社アンナプルナ・ピクチャーズの子会社。本社はカリフォルニア州ウェスト ハリウッドにある。インディーゲームのパブリッシングを手掛けており、有名どころだと『フィンチ家の奇妙な屋敷でおきたこと(Giant Sparrow開発)』や、『ゴロゴア(Buried Signal開発)』なんかもこの会社が販売元となっている。

LuísAntónio

 サンフランシスコに住むインディーゲーム開発者。公式サイトの開発者のゲーム開発歴にリンクをはっておきます。

参考 Art of LuisArt of Luis

どんなゲーム?

概要

 チュートリアルを終えて、アパートの自室に入ったところを基準の0分とすると……
 1分以内に、妻が出迎えてくれる。しばらく二人で幸せな時間を過ごす。
 5分位で、突然、警察を名乗る男が訪ねてくる。
 8分位までに、その男に妻とともに拘束され、なすすべなく殺されてしまう。
 死ぬと、自室に入った瞬間である基準の0分に戻る。

 妻はループ前の記憶はなく、警察が訪ねてくることも、殺されてしまうことも知らない状態に戻るが、主人公は記憶がある。そのため、初回はなかった「ループをしていることを妻に説明する」のような選択肢が出てきたり、ループ前に知った電話番号を覚えていて最初から電話をかけられたりする。

 なぜ男に殺されなければならないのか、なぜ殺されると時間が巻き戻るのか、どうすればこの状態を抜け出すことが出来るのか。疑問が尽きない中、事態解決のために部屋の中を探し回る。

 移動できる部屋はスタート地点のリビングダイニングキッチンと、向かって左奥のベッドルーム、正面奥にあるバスルームの3部屋のみ。この3部屋を隅々まで探しに探して謎を解く。

操作方法

 ポインターを動かして、クリックしたりドラッグ&ドロップしたりするだけで、複雑な操作は一切ない。

 移動したい先をクリックすれば、主人公がそこまで移動してくれるし、何らかのアイテムやあやしい場所があれば、そこをクリックすれば、手に取れたり調べられたりする。アイテム欄に入ったアイテムはドラッグすることで、組み合わせたり、どこか別の場所に置いたり、相手に見せたり渡したりすることが出来る。操作はたったそれだけ。

シンクにあるマグカップをクリックするとアイテム欄に入り、アイテム欄に入ったマグカップをドラッグしていってシンクにドロップすると水の入ったマグカップが手に入る。

 最初から色々出来る割には、謎を解くカギが何なのか分からず、どうしていいか全くわからない。全体像が見えてくるとやることが徐々に明確になっていく。その徐々にわかってくる感じが絶妙で「今回のループではこうなったから、次はこうやってみよう」と、試行錯誤が楽しい。やりたいことが上手くはまって、ストーリーが進んだときは、かなり気持ちが良い。ただ、一度行き詰ると抜け出しにくく、同じ行動を何度も見ないといけなくなるため(スキップ機能はない) 、面倒になってしまう可能性もある。

どんなストーリー?

 私がアパートの自室に帰ると、リビングは暗く静まり返っていた。明かりをつけ、水でも飲もうかとコップを手に取るとバスルームから妻が出てくる。

 リビングの明かりも付けずにバスルームで何をしていたのだろうか? 明かりのスイッチは玄関側にしかないため、リビングの灯りを消すと、暗い中を通ってバスルームに向かわなければいけない。よほど長時間になるならともかく、用を足すだけならわざわざ部屋の灯りは消さないだろう。かといって、シャワーを浴びていたというような様子もない。そもそも、ベッドルームの灯りをつけっぱなしにしたまま、リビングで過ごすこともあるくらいの妻だ。シャワーを浴びていたとしても、リビングの灯りを消すかどうか……。

 それとも外が明るいうちからバスルームに籠もっていたのだろうか? それこそ何をしていたんだ、という話になる。

 そんな私の疑問をわきに、妻は「最高の夜ね。しかも、デザートまで作ったのよ。」となにやら上機嫌だ。

 バスルームになにかあるのだろうかと覗いてみる。シャワーを使っていた風ではない。トイレの蓋を開けてみるが特に変わった様子はない。釈然としない気持ちのままリビングに戻ると、妻はソファーに座って本を読んでいた。

 デザートを食べようと声をかけると彼女はベッドルームに何かを取りに行く。

 冷蔵庫を開けると中央に美味しそうなケーキが二つ並んでいた。これが妻の作ったデザートだろう。突然どうしたのだろう。今日は私の誕生日ではない。妻の誕生日でもないし、結婚記念日でもない。なんのサプライズなんだろうかと、思いながらケーキをテーブルの上に並べる。

 私が席に着いて待っていると、ほどなくして妻がベッドルームから何かを後ろ手に持ってやってきた。妻はその足でリビングの灯りを消しにいき、ラジオの電源を入れた。ろうそくの明かりと、しとやかな音楽が柔らかな雰囲気を醸し出す。

 何口かケーキを食べたところで、妻が「ふふふ…お楽しみはデザートだけじゃないのよ。他にもあるの。いいから開けて。」と、さっきベッドルームから持ってきた何かをくれる。

 綺麗にラッピングされた薄い正方形の箱だった。十字にかけられた赤いリボンが箱の上部でちょうちょの形に結ばれている。

 妻に促されるまま開けてみると、中には赤ちゃんの服が入っていた。つまりは……。

「ふふ。妊娠したの。赤ちゃんができたのよ。」

 そういうことだったのか。全てに納得がいった。私は喜びを素直に表現する。私たちは今、幸せの絶頂にいると言っていいだろう。そして、その絶頂は日々更新しながら続いていくのだ。子供が生まれ、すぐに歩くようになり、言葉を覚え……

 偉人の生涯を描いたドラマなんかで「しかし、その幸せは長く続かなかった。その三年後……」なんてナレーションが入ることが良くあるが、私の場合は「その数秒後」だった。

「ドアを開けろ、警察だ!」

 何か近くで事件でも起こったのだろうか。警察が家を訪ねてくるような心当たりは何一つない。妻は不安そうな顔をしながらも「私が出るわ。」と、玄関のドアを開ける。

「警察だ。はい、後ろを向いて。」

 有無を言わせぬ態度で押し入ってきて、妻を後ろ手に縛りあげる。私は呆気にとられて何もできなかった。

「さあ、お前もだ。両手を後ろに回せ。」

 全く意味がわからない。妻だってそうだろう。それとも妻は何か知っているのだろうか? そもそも、本当に警察か? 警察ならいずれ誤解が解ければ釈放されるだろう。しかし、もし、警察を名乗る強盗だったとしたら? 今すぐ抵抗するべきだ、と思うが男の力は強く、なすすべもなく縛り上げられ、床にうつぶせに押し倒される。

「こ…こんな…手首が痛いわ…」

 妻の悲痛な声が聞こえてくる。こんなことが許されていいはずがない。私は芋虫の様に体をくねらせんながら、どうにか立ち上がる。男に抗議しようと向き直ったとたん、左ほほに強い衝撃を受け、再び床に倒れた。

 殴られた。そう理解したときには意識はもう……。

 私は殴り殺されたのだ。ところがその次の瞬間、私はリビングに何事もなく立っていた。妻も警察を名乗る男もいない。理解が追い付かず佇んでいると、バスルームから上機嫌な妻が出てきた。

「最高の夜ね。しかも、デザートまで作ったのよ。」

良かった点、面白かった点

 ベッドルームの電灯のスイッチが壊れていたり、冷蔵庫に写真が貼ってあったり、コップに水を注げたりと、色々調べられる所はあるのに、最初は何をしていいのかさっぱりわからない。何の意味があるのかすらもわからない。ところが、試行錯誤を繰り返すうちに少しずつ少しずつやることが分かっていく。その試行錯誤が楽しい。これにも意味があったのか、これはそういうことだったのかとどんどん謎が解けていく。謎が解けていくごとに話が二転三転していく。意外性のあるストーリーも良い。

 ただ、一度行き詰まると、抜け出すのが難しい。また、スキップ機能がないため同じ場面を何度も見ることになる。1周が10分以内と短時間ではあるが、それでも少し面倒に感じた。

まとめ

  • クリック、ドラッグ&ドロップだけのシンプル操作。
  • 試行錯誤が楽しい。
  • 二転三転するストーリー。
  • スキップ機能がなく、行き詰まると同じ場面を繰り返し見ることになり煩わしい。
  • すっきりハッピーエンドとはならないため、終わり方は好き嫌いが分かれる。
  • もやもやしたまま気持ち悪い感じの終わり方が好きな人には合うと思う。

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