若きウェディの悩み。

死んだウェディげいむすきお

 吾輩はげいむすきおである。ウェディの戦士げいむすきおである。

 吾輩と同じ「げいむすきお」という名の若いウェディの魂が死に、ただの肉塊と化したその抜け殻に吾輩の魂が入り込んだ。

死んだウェディげいむすきお

 これは偶然なのであろうか? 同じげいむすきおという名のウェディがいることだけでも驚愕の事実だが、そのウェディが吾輩と同時期に死んだ? そのようなことが果たしてありうるのだろうか? いや、同時期かどうかはわからぬか。吾輩の肉体が死に、魂の状態でどれくらいの時が流れていたのかわからぬからな。

 しかし、懸念はもう一つある。もし吾輩がオーガを選んでおったら? げいむすきおという名の若いオーガの体に吾輩の魂が入り込むこととなっておったのであろうか? その時はげいむすきおという名前ではない若いオーガの肉体に入り込むことになっただろうか?

 わからぬ。

 もしかしたら、最初から「ウェディのげいむすきお」が死ぬことが決まっていたのかもしれぬ。そうなると吾輩がウェディを選ぶことも決まっていたということになる。まるで「ウェディのげいむすきお」は最初から吾輩に体を譲る為に生きてきたみたいである。

 そんなはずはない。それではあまりにむなしい生だ。全ては偶然だ。

 そう思いはするが、それでも少しうすら寒い思いがした。推測はいくらでもできる。だが、今はそんなことを問題にするべき時ではなさそうである。げいむすきおという名のウェディが死んでしまったのは、もう取り返しのつかない事実なのである。せめて、彼の成そうとしていたことを、彼の代わりに吾輩が成そうではないか。

 彼は天涯孤独の身で、いつか生みの親を探す旅に出たいと思っていたようであるので、その役目、吾輩が代わろうではないか。目的を果たすため、吾輩はやるべきことを逆算していく。

 生みの親を探す旅に出るためには、一人前と認めてもらう必要がある。一人前と認めてもらうためには、シェルナーと呼ばれる仲人のような役目を無事果たさなければならない。結婚式を無事に挙げさせることで、シェルナーの役目を果たせる。式を挙げさせるためには花婿が花嫁に贈る貝を選らなければならない。

 どうやら、花嫁に贈る貝を探す手伝いから始めればよさそうである。

 大きな目標を達成するために、やるべきことを分割し、出来ることから片付けていくのがデキる勇者である。デキる勇者かどうかはともかくとしても、一つずつ問題を解決していくのが目的達成のための早道であろう。「スライムから始めよ(意味はリンク先)」というやつであるな。

「スライムから始めよ」

 大きな目標を持っていても、まずは手近な所から始めていくのが良いという意味で使われる。『オーグリード大陸にドラゴンを倒したというオーガの戦士がいた。その戦士に「どうすればドラゴンが倒せるほどに強くなれるのか?」と、訊ねたところ「まずはスライムを倒せるようになりなさい。スライムが倒せたら次はドラキーです。ドラキーの次はゴースト……。そうして、少しずつ強い相手に勝てるように頑張りなさい。そうすれば、いずれドラゴンも倒せるようになるでしょう」と答えた』という故事が由来。

スライムより始めよ

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