吾輩はげいむすきおである。
ついこの間まで人間であったのだが、現在はウェディである。
昨日は「ついこの間まで人間であったのだが」の話をしたので、本日は「現在はウェディである」の話をしたいと思う。
吾輩は人間をやめさせられた。吾輩は冥王なにがしの攻撃を受け死んでしまった。肉体は死んだのであるが、なぜか魂は助かっていたらしく、わけのわからぬ場所に飛ばされてきたのである。
ここは一体どこなのであろうか?
その時、心に直接話しかけてくるものがあった。そのものが言うには、吾輩は魂だけ助かっておる状態であるので、吾輩とは逆に肉体だけ助かった状態の者の肉体に、わが魂を移してくれるということらしいのである。
人間の肉体があればよかったのであるが、残念ながらそんな都合のよいものはなく、オーガ、ウェディ、エルフ、ドワーフ、プクリポの中から選ばねばならぬらしい。
全く状況を飲みこめぬが、吾輩一人が特別扱いを受けておることは確実である。その証拠に、村の他の住人は誰一人ここにはきておらぬ。特別な扱いを受けるからには、特別な事を成さねばならぬ。何より、わが村を滅ぼした何者かを討ち果たさねばならぬ。こうして吾輩は使命に目覚め、勇者げいむすきおが誕生したわけである。
吾輩は考える。
勇者とは何か? ──勇者とは恐れぬものである。
なぜ恐れぬのか? ──恐れぬのは強い信念をもつからである。
しかし、信念だけでは仇はとれぬ。力も必要である。
そうとなれば、ここが思案のしどころである。それぞれの種族の特徴を姿なき声に教わる。
教わったことと吾輩の感じたことをまとめる。
オーガ:力と勇気の種族。力と身の守りに優れる。⇒ 戦士系
ウェディ:愛の歌を詠う種族。力と素早さに優れる。⇒ 武闘家系
エルフ:叡智を備え自然を敬う種族。魔力に優れる。⇒ 僧侶系
ドワーフ:富と技術を尊ぶ種族。器用さに優れる。⇒ 盗賊系
プクリポ:笑いと夢に生きる種族。魔力に優れる。⇒ 魔法使い系
勇者と言えば、片手剣に盾が伝統的様式美というものである。少なくとも、杖やツメや短剣はお呼びではない。
吾輩はどちらかというと形から入る性質なのである。
そうなると職業は戦士に確定である。戦士に向いた種族はオーガ、次点でウェディとなり、この段階で二択である。
オーガは脳筋の印象が強く、かといってウェディは軽すぎる心持ちがする。
吾輩は大いに悩んだ。
大いに悩んだ結果、ウェディにすることにした。
多少、なよなよしていた方が今風であろう。
それはそうとして種族の像が見当たらぬ台座が二か所あった。
これは竜族や人間族がはいるところなのであろうか?