- タイトルクエストのネタバレを含みます。
- NPCのセリフは全て原作そのままで、削ったり付け足したりしていません。
- NPCの立ち振る舞いは全て原作準拠ですが、動画を文章に起こしている形であるためげいむすきおの主観が大いに入っています。
- 受注条件ランガーオ村の王者 第3話をクリアしている
- 場所ランガーオ村(オーグリード大陸)
- 依頼主ギュラン
げいむすきお
ランガーオ村の王者 第4話 戦いの呪縛
村王の部屋を訪れると、ギュランがこれ以上にないくらい肩を落としておった。
あまりに哀れで、どう声をかけたものかと思っていたら、吾輩に気付いて近寄ってきた。
「おおっ、げいむすきお! よく来てくれた!」
意外と元気そうである。
「そ……村王がこんな手紙を残していなくなってしまったのだ。読むからそこで聞いていてくれ……。」
どこにおさめていたのか、背中から書置きを取り出してきた。
「……ギュランよ。お前をわしの側近としてから、もう10年あまりの時が過ぎるか。お前にひとつ頼みたいことがある。これからお前にはランガーオ村の子供たちのために学校を作ってほしい。わしはこう思うのだ。ランガーオ村の若者たちがこの村だけで生涯を終える時代はもう終わった……と。ジーガンフやアロルドとマイユ、そしてげいむすきおのように前途ある若者が世界を旅することで高みを目指す時代が来る。だが、若者たちが見果てぬ世界に旅立つとき、この村のことしか知らずにいたら困るだろう。彼らがそんな目にあわぬように……お前が子供たちにこの世界の様々なことを教えてやってほしいのだ。この村でいちばんアタマのいいお前が、げいむすきおたちからの協力を得れば、必ず実現できることだとわしは信じる。とても時間がかかることだろう。だが、わしからの最後の頼みだ。どうか聞き届けてほしい。」
この手紙は……吾輩が協力すること前提であるな。ギュランがこの手紙のことで吾輩に相談するであろうことを見越しての内容であろう。狡猾である。
「……手紙はここで終わっている。これは村王の……遺書ということか……。」
そしてまたどこかわからぬところに書置き……遺書をしまった。
「手紙には行方は書かれていないが、とにかく村王を探さなくては! げいむすきおよ! 村王を探してくれるか!」
ここまできて探さぬことはない。ガガベスの息子ガガイと村王の因縁の対決が気になってわざわざこうして様子をうかがいにきたのであるからな。
「すまぬ、げいむすきお! 恩に着るぞ! ただ、やみくもに走り回るよりも村王がどこに行ったかの情報を探す方が確実だろう!」
偉そうに助言をしてきおった。これまでどれだけの数の人探しを頼まれ、そして見つけてきたと思っておるのか。人探しにおいてはプロ中のプロである。
「こちらも手を尽くす。げいむすきおもまずは情報集めに全力を注いでくれ!」
吾輩の経験上、そう言って吾輩よりも先に見つけたヤツは一人としておらぬ。せいぜい吾輩が見つけて話を聞いているところに、呼びもせぬのに現れて勝手に話に加わってくる位が関の山である。
とりあえず、片っ端から家にあがりこみ、村王の行方を聞いて回る。
なかなか有力な情報が得られない中、ヒントはクーガの家にあった。中に入ると見知らぬエルフがちょうど入れ違いに出ていくところでぶつかりそうになる。
「おっとっと。こりゃ、すいません。」
個性的な顔つきに個性的な服装をしたエルフである。
「おや? あなたも旅の方のようですな。アッシも世界を旅しながらめずらしい物を仕入れて回る旅の商人でござんすよ。……むむっ? ワケありな様子でござんすね。ほうほう……。村王クリフゲーンさまをどこかで見かけなかったかと? 村王ならこの村に来る道中におかしな場所で見かけたでござんすよ。あれはたしか……獅子門からグレン領東に抜けたあたり……村王はそこから西の方へ向かっていきやしたね。なんだか顔色が悪かったんで妙に気がかりだったんでござんすよ。」
口調もなかなかに個性的である。……口調に関しては吾輩も人のことはいえぬであるがな。
「ではアッシは先を急ぎますんで失礼いたしやすよ。」
滑稽なヤツではあったが、情報は非常に有用なものであった。
『獅子門からグレン領東に抜けたあたり……そこから西の方』となると野獣の巣であろうか? 決闘の場としてはうってつけである。
おそらくガガイにそこを指定されたのであろう。吾輩は慌てて野獣の巣へと向かう。果たして間に合うであろうか。
吾輩が野獣の巣に足を踏み入れたその時にはすでにクライマックスであった。村王は膝を付き、その前に見知らぬオーガが無傷で立っている。これまでの話の流れ的に、おそらくこやつがガガベスの息子ガガイであろう。
「あのガガベスの忘れ形見……。さぞ強くなっただろうと思ってはいたが、よもやこれほどとはな……。今のお前ならば……ジーガンフやアロルドにさえ勝てるかもしれん……。」
『ジーガンフやアロルドにさえ勝てるかもしれん』であるか。なるほど、それでは、マイユはどうなのであろう。村王の中でマイユはどういう位置づけなのであろう。村王にとって、マイユはいまだにか弱い女の子なのであろうか?
吾輩の見立てでは、三人の中で一番ポテンシャルが高く、現在の実力も一番なのはマイユだ。
それとも20年前、ガガイがまだ村に住んでいたころ、ガガイと、ジーガンフやアロルドが顔見知りだったか、少なくとも名前くらいは知っているであろうと、二人の名を挙げただけなのであろうか?
もしくは『ジーガンフやアロルドにさえ勝てるかもしれん』の後に『さすがにマイユには勝てぬであろうが』がこっそりとつくということであろうか?
吾輩が他所事を考えている間にも、ガガベスの忘れ形見は村王を見下ろし、村王を挑発している。
「自ら戦いを挑みに来たその勇気には価値があると認めてやろう。だが相手の実力とおのれの実力を推し量る能力まで失ったとあってはただのもうろくした年寄りだ。……老いるということはみじめなことだな。クリフゲーン。」
村王は苦痛に顔をゆがめながらどうにか声を絞り出す。
「……お前の言うとおりだ。どうやらわしに勝ち目はないようだ……。さあ、とどめを刺せ……! 今こそ父親の無念を晴らすがいい。だが……最後にひとつだけわしの願いを聞いてくれぬか……。」
少しだけ間があって、ガガイは一言で答えた。
「……言ってみろ。」
「ガガイよ……。ランガーオ村に戻るのだ……。お前は強い……。あの村は強き者を尊敬で迎える。きっとお前は歓迎されるはずだ……。ガガベスに勝ったあの日に……お前を復讐の鬼にしてしまったのなら、わしはお前に未来を返したいのだ……。故郷ランガーオ村で生きよ。わしは誰にも伝えずここに来た。お前がわしを倒したことは誰も知らん。」
その言葉を聞いてガガイはさらに苛立ちを募らせた様子で吐き捨てるように言った。
「貴様にこのオレの気持ちを知ることなどできるはずがないのだ……。」
ガガイの気持ち……難しいところである。なぜガガイは村を飛び出し、また戻ってきたのか。村王個人に復讐がしたいだけであれば、村を飛び出す必要はなかったはずである。最もシンプルな復讐は『村にとどまり村王よりも強くなること』だったはず。そうすれば立場は逆転し、ガガイが村王となり、クリフゲーンおよびその家族は弱者として虐げられることになるはずだからだ。なんなら試合の最中に”誤って”殺してしまってもいい。それで責められることがないのが、かつてのランガーオ村だ。
しかし、ガガイは村を飛び出した。そこにはなにか意味があるはずである。
「残念だがお前にとどめは刺さん。」
「な、なに……!? なぜだ……。」
「オレの目的はお前を殺すことだけではない。」
やはりそういうことであるな。
「身体が動くようになったら、村に戻ってこう伝えろ。死神がこの村を滅ぼしにくる……とな。死神から逃げるか、立ち向かうかはお前たち次第だ。だが、いずれにせよ、ランガーオ村は壊滅させる。」
ガガイが恨んでいるのは村王個人ではなかった。ガガイが復讐をしたい相手は、ランガーオ村……強さがすべてという価値観に支配される村そのものだったのである。
だから、自らがその価値観の中で生きることをよしとせず、村を飛び出したのであろう。
「バカな……。お前は……。」
「あの腐った村を壊滅させなくてはオレがこの世に生を受けた意味がない。そしてクリフゲーンよ。貴様にはあの村が滅びる様を見届ける義務がある。かんたんに死なせてもらえると思うな。」
ガガイは村王を残して出ていった。
このまま見て見ぬふりをして帰るわけにもいかぬので、村王に声をかける。
「なっ……げいむすきお? まさか……。」
まさかもなにもいつものパターンである。
「そうか、ギュランに頼まれてわしを探しにきてくれたのか……。あれがガガベスの息子ガガイ……。若き日のわしが生んでしまった復讐の鬼だ……。戦ってみて確信した……。今のガガイの強さならば本当にたったひとりで村を壊滅させられるだろう。ジーガンフもアロルドも村にいない今、ガガイを止める術がない。いったいどうすれば……。とにかく一度村に戻ろう……。わしなら大丈夫だ。ひとりで戻れる……。げいむすきおも村に戻ったらわしの所へ来てくれ……。」
村王も出ていき、野獣の巣には吾輩ただ一人が残された。
こんな所で一人ぼんやりとしておってもしかたがない。ガガイをどうするべきか思案しながら村への道を行く。
吾輩の予想に反して、ガガイからは瘴気が感じられなかった。
「ガガイはその強い復讐心のために、どこかになにかしらで封印され本来の力を失っている魔物に魅入られ、取引をして力を手に入れたが、その代償として自分の心を失ってしまった的なヤツ」と思っておったが、どうやらそういうわけではなさそうである。
そうなると厄介だ。ガガイの言い分もわからぬではない。親を殺された上に、その親を殺した奴が村中総出で持ち上げられ、殺された方の家族が迫害されて村を追い出されたような状況では、村人すべてに復讐心を抱いていたとしても無理からぬ話である。
今のガガイを撃退したとしても、後味の悪さが残るだろう。かと言って説得が通じそうにも見えなかった。いっそ、瘴気にまみれておれば力でねじ伏せて終わりにすることができるのであるが……。
ガガイが今のランガーオ村を見たらどう思うのかも気になる。多少なりとも復讐心が薄れてはくれぬものか。かつての力がすべてのランガーオ村は、今はもうない。「力が正義の時代は終わったのか、やったー」と、そこまでシンプルにはいかぬであろうこと位は想像つくが……。
うーむ……。結論の出ぬままに村についてしまった。
「お…お……げいむすきお……。戻った…か……。どうにか…この村までたどり着いたが……ガガイから…受けたキズが……思った以上に深手だったようだ……。ガガイの…ことについては……わしに……考えがある……。しばらく……村の者には…だまっていてくれ……。」
村王には何かしら案があるようである。それならそれで吾輩は黙っておくである。
「そ、村王が戻ってくれたが全身にひどいケガをしておられる!」
ギュランがいつにもまして興奮しておる。とはいえ、村王の怪我をみれば、それも無理からぬことである。
「げいむすきおが見つけだしてくれたのだろう。これはそのお礼だ。受け取ってほしい。」
確かに見つけはしたであるが、吾輩はなにもしておらぬ。見つけた時にはすべてが終わる所だった。吾輩が見つけておらずとも村王は勝手に村に帰っておったであろう。ただ、くれるというのであればもらっておくのである。
「村王はひどいケガを負っているというのにお前に手間をかけさせたことを気にしている。……すこし身体を休めていくがいい。」
ガガイをどうすべきか。吾輩の中で答えは見つかっておらぬが、考えがあるという村王の言葉を信じ、今の所は身体を休めることにするのである。