【ランガーオ村の王者】第2話 195.村の聖地

注意事項
  • タイトルクエストのネタバレを含みます。
  • NPCのセリフは全て原作そのままで、削ったり付け足したりしていません。
  • NPCの立ち振る舞いは全て原作準拠ですが、動画を文章に起こしている形であるためげいむすきおの主観が大いに入っています。
ランガーオ村の王者
195.村の聖地
  • 受注条件ランガーオ村の王者 第1話をクリアしている
  • 場所ランガーオ村(オーグリード大陸)
  • 依頼主村王クリフゲーン

げいむすきお

ギュランに頼まれ村王を助けた吾輩。再度、村王の部屋を訪ねると、今度は村王自ら頼み事をしてきたのである。詳細を知りたい者のみ読み進めるとよいのである。

ランガーオ村の王者 第2話 村の聖地

 吾輩は再び村王の部屋を訪れた。
 特に理由はない。勇者とはそういうものである。ふらっとよった先で、ちょろっと起こった事件を、さらっと解決する。
 そういうものである。

「おお、げいむすきお、よく来てくれた。ちょっと困っていることがあってな。命の恩人に対して、気が引けるのだが、ひとつ頼まれてくれんか」

 椅子に座ったまま、気が引けているとはとても思えないような尊大な態度で、頼みごとをしてきおった。
 いかついオーガにあまりぺこぺこされても気持ち悪いので、多少偉そうでもよしとするのである。

「ひさしぶりに、村の武闘場の清めの儀式を行いたいのだが、その儀式で武闘場にまく特別な塩を切らしていてな。特別な塩というのはエゼソルトってやつだ。その名の通りドワチャッカ大陸のエゼソル峡谷にある塩湖で採れる。すまないがそいつを採りにいってくれんか? もちろん、礼はさせてもらうぞ」

 確かにこれは『ちょっと困っていること』であるな。ちょっとすぎる、と思わなくもない。ここはせめて『エゼソル峡谷のまわりは強い魔物が多く、並の者では危険だ。本来ならわしが行くところだが今ここを離れるわけにはいかない』とかなんとか多少話を盛っておいてほしいところである。モチベーションにかかわる。ただ採って帰ってくるだけでは、子供のおつかいではないか。
 無論、そんな思いはおくびにも出さず、快く引き受けた。

「おお、やってくれるか! さすがはげいむすきおだ! ガハハ!」

 村王名物『ガハハ』笑いが出る。

「塩湖の入り口付近に山小屋がある。そこに塩を採取しているドワーフがいるのでわからないことは聞いてみるといい。エゼソル峡谷くらいげいむすきおなら散歩がてらに行ける範囲だろう。それじゃあ頼んだぞ。」

 突然吾輩を上げ始めた。確かにエゼソル峡谷くらいであれば散歩がてらに行ける範囲ではあるが、乗せられてる感もする。

 散歩がてらにエゼソル峡谷に行くと、うら寂しい山小屋があった。入り口にカギはかかっておらず、誰もおらぬのかと思い黙って中に入るとドワーフが一人いた。彼が村王の言っていた例のドワーフだろう。

 名はチレチェチェというらしい。
 村王の使いであること、塩を少し分けてほしいことを告げる。

「北東にゃあ、エゼソルトっつー塩を採取できる巨大な塩湖があるだよ~。あんたランガーオ村の村王クリフゲーンの使いの方かいね~。村王が塩採りの使いばよこすなんて、ずいぶんひさしぶりだよ~。塩湖に入るとすぐに塩の塔があるでな~。その近くのツボにいい潮が入ってるから勝手に持っていってええだよ~。塩の塔は目立つからすぐわかるだよ~。気をつけていくだよ~」

チレチェチェ

 チレチェチェに礼を言って、塩の塔をめざす。

 塩湖に着くとすぐに塩の塔がわかった。確かにツボもある。

 中をのぞくと塩が詰まっている。どれくらい必要なのかわからぬから、手持ちの袋にごっそりいれておいた。
 少しなめてみるとかなりしょっぱかったである。

「おお、げいむすきお、戻ってきたか。エゼソルトは無事に採ってこれたか?」
 素直に持ってきたエゼソルトを渡す。
「おおっ、手に入れたか! さすがはげいむすきおだ!」

 村王はエゼソルトの入った袋を握りしめると、不意に立ち上がった。

「これがあれば、清めの儀式ができる。正式な儀式など、もう何年ぶりになるだろうな」

 年単位でやっていなかったのであるな。それがなぜ突然、今……?
 例の手紙が関係するのか、年齢による体力の衰えを感じ始めたことが原因なのか、その両方か、はたまたただのきまぐれか……。

「では、わしはさっそく村の武闘場へ行くとしよう。げいむすきおも後で見にくるといい。これを逃すと次にやるのがいつになるかわからんからな。ガハハ!」

 なぜか吾輩が儀式を見たい前提で話を進めようとしてくるである。吾輩は別にみたくないである。次が十年後でも、二十年後でも、別に興味はないである。
 しかし、村王に恥をかかせるのも可哀想かと思い、是非とも見たいという体で、あとから行くことを告げると村王はさっさと行ってしまった。
 面倒だと思いながら、しぶしぶ武闘場まで歩いていくと、村王は戦いの舞台に何か白い粉をまいていた。おそらくあれこそが吾輩の持って帰ってきた塩で、これが清めの儀式なのであろう。
 子供たちがその儀式の様子を見ている。

 塩をまき終えると中央まで戻ってきて右膝を付き、地面に向かって語りかける。吾輩には気づいておらぬようだ。

「この場所で我らを見守る戦いの神よ……。今日の勝者にさらなる強者との出会いを。敗者にはふたたび戦いに向かう勇気を。そして、その両者に死を恐れず、勇ましく戦い抜いたことへの惜しみなき賛辞を与えたまえ……。」

 俯いたまま目を閉じ、天に祈るように胸の前で掌を組む。

「これで清めの儀式は終わりだ」
「すっげー! いつもはお祈りだけの短いやつだからこんな本格的なのはじめて見たー!」

 子供たちがはしゃぐ。

「戦いの前に毎回これをやるのが本当なのだ。最近はすっかり略式ばかりになっているがな」
「ねえねえ そんおー! お塩をブワワワアってするのはどうして?」
「この場所で戦いの果てに死んでいった者たちの魂を鎮めるためだ。……そして、我らを見守ってくれるよう祈りを込めているのだ」
「……かつて神が見守るこの武闘場では毎日のように想像を絶する激しい死闘が繰り広げられていた。より強いものを生みだし、さらなる高みを目指す。それがこのランガーオ村の教えだったためだ。そのために……勝者にはすべてが与えられ敗者は残酷なまでにすべてをうばわれた。それが村のためであると誰もが信じていた」

 そこまで言って一呼吸置き、また話し始めた。

「だが今は…………」
「ハイハイハイ!! オイラ知ってる!」

 村王の言葉を遮り、オイラっ子が元気に答えた。

「今は勝ったほうだけじゃなくて、負けたほうにもケイイを払うんだよねっ!」
「……その通りだ」

 村王は満足そうに二回うなずく。
 果たして子供たちはその言葉の意味をどの程度わかっているのだろうか。
 子供は大人の言葉をまねる。
 もし、逆のことを言われておったら、逆のことをそのまま言っていたことだろう。それこそ「勝者にはすべてが与えられ、敗者は残酷なまでにすべてをうばわれる」というような教えであったとしてもだ。

「死への恐怖に打ち勝ち勇気を持って戦った両者を等しく敬え。それが今のこの村の教えだ」

 この村の教えを子供たちに再確認させたかったため、略式ではなく正式な清めの儀式を行ったというわけか。村王はただ強いだけではなく、教育者としての側面ももつわけであるな。

「ランガーオ村の子供たちよ! さっき見た儀式とともにその教えを決して忘れずに強く大きくなるのだ!」

 村王はそこでようやく吾輩に気付いたらしく、こちらに向かってきた。

「げいむすきお見ていたか。この村の子供たちはなかなかたくましいだろう。敗者にも勝者と同じように敬意を払う……。子供たちがそのことをわかってくれていれば大丈夫だ」

 大丈夫? なんの話であろうか?

「きっとこの村を正しい未来へと導いてくれるだろう……」

 正しい未来であるか。まるですぐにでも死ぬような口ぶりだ。体力が落ちてきているとはいえ、この子たちが大人になるくらいまではさすがに生きているのではないか? まだまだ胸を丸出しで雪山に行くくらいだからな。
 そのことをツッコもうとしたところ「おっといかん。げいむすきおに塩を採ってきてもらった礼をまだしていなかったな」と先を取られ、タイミングを失った。

「遅くなってすまなかったな! さあ、受け取ってくれ!」

 村王の思惑はおいおいわかってくるであろう。今日のところは黙って帰ることにするのである。

ランガーオ村の王者

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