世界の組織

 貴公はアストルティアに存在する組織について、どの程度知識をもっておるであろうか? いくつか例を挙げてみるので、まずは自らの知識量を確かめてみると良いのである。

有名な組織あれこれ

世界宿屋教会

 吾輩らのような冒険者に最も有名かつ最も馴染み深い組織といえば、やはり『世界宿屋協会』であろう。駆け出しからベテランまで、世話にならぬ日はないのである。ある程度の手練れになってくると、宿屋に泊まること自体は少なくなってくるが、それでも旅のコンシェルジュを利用するために宿屋を訪れることはたびたびあるであろう。
 旅のコンシェルジュは、ふくびき、元気チャージの交換、カジノプレイチケットなどの贈り物やクエスト報酬の受け渡しなど、様々な業務をこなしてくれておる。

 世界宿屋教会のトップはゼネラルマネージャーロクサーヌである。

ダーマ教団

 駆け出しからベテランまで世話になる団体と言えば、他には『ダーマ教団』もそうである。神殿自体はレンダーシアにあるため、五大陸出身の冒険者が本殿をすぐ巡礼するというわけにはいかぬのであるが、出張所は各大陸各地にあり、転職を手伝ってくれておる。そして、今も冒険者の利便性のために活動範囲を広げてくれておるのである。

 ダーマ教団のトップはダーマ大神官である。

叡智の冠

 名前だけは有名であるが、活動内容に関しては知る人ぞ知るといった『叡智の冠』。1000年前、勇者アルヴァンと共に不死の魔王ネロドスと戦った秘密組織である。また、魔軍十二将を魔法の迷宮に封じたのもこの組織である。

 叡智の冠のリーダー格は賢者ルシェンダである。

ガズバランの牙

 反政府組織の有名どころと言えば『ガズバランの牙』であろうか。かつて『ガズバランの剣』という名のガートラント王公認の組織があった。それがある事件をきっかけに一度解体され、残党が名前を変えて非公式な活動を続けているのである。
 という理性によってつくられた人の武器から、という原始的な理性をもたない獣の武器へと名前を変えたあたりは、自分たちのことが良く分かっており、センスの良さを感じるであるな。
 そのセンスの良さでもって、グロスナー王に復讐するなどという馬鹿な真似はやめておけば、なお良かったのであるが残念である。

 ガズバランの牙のトップは……反社会的勢力であるし、公表は控えておくのである。

組織を構成する人々

 このようにアストルティアには様々な団体が、様々な思想の下に独自の活動を行っておる。メジャーどころを挙げたので、トップも含めて大体は知っておったであろう。では、その構成メンバーはどうであろうか? トップ以外を知っておるのは叡智の冠くらいであろう。

 組織のトップは注目されることが多い。それは当然である。その組織に一人しかいない重要な人物であり、その地位に見合うだけの能力を持っているからである。
 しかしである。組織は一人では動かぬ。組織を構成する様々なメンバーが必要である。トップと様々なメンバーを合わせて一つの組織である。

「神は細部に宿る」「大魔王はスライムを創らず」という言葉がある。組織の細部、スライムと言えば、役職もつかぬ末端の構成員である。吾輩はその者たちに注目したいと思っておるのである。

大魔王はスライムを創らず

 かつて、創造神の生み出せし世界を模倣し、偽りの世界を創り出した大魔王がいた。彼は大陸も、空も、風も、住人すらも創り出した。もはや、どちらが真でどちらが偽りかは各人の主観の中にしかないのではないかと思わせるほどの出来だ。

 しかし、大魔王の世界にはスライムがいなかった。どこを探してもいなかった。神の世界には確かにいたにもかかわらずだ。大魔王がどういうつもりでスライムを作らなかったのかはわからない。とるに足らない存在だと思ったから創らなかったのか、それともあまりに強大な存在ゆえ、スライム如きのとるに足らない魔物は、存在することに気づきもしなかったのか。いずれにせよ、大魔王は勇者とその盟友によって、偽りの世界を看破され、打ち倒された。

 小さなほころびでも、放っておけばそこからほつれていき、やがて裂けてばらばらになる。

 スライムの不在が偽りの世界を看破された直接の原因ではなかったとはいえ、大魔王はスライム一匹に至るまで完璧に創るべきだったのだ。グランゼニスが人間を創り出し今も加護しているように、魔物を創り出し統率するのが大魔王であるならば、最弱の魔物をも忠実に創るべきだったのだ。

 このことから「何かを作るとき、細かい部分まで含めておろそかにしていいものは何一つとしてない」の意で使われる。

 最近はその大魔王の再評価の流れとともに、「偉大な人物は細かいことを気にしたりはしない」の意で使われる向きもあるが、誤用である。

 構成員一人一人を掘り下げて見ていくというわけではないのであるぞ。セリフの少ないモブをいくら掘り下げたところで、公式のキャラクターズファイルのようなことは出来ぬのである。吾輩は組織を一人のキャラクターと捉え、構成員はそのキャラクターの体の一部として、一つ一つの組織を見ていきたいのである。

以前に調べたツボ錬金ギルドでは

 以前、吾輩はツボ錬金ギルドについて調べたことがある。

マスター・ポーリア【NPC】ツボ錬金職人達

 ツボ錬金ギルドを調べてまず気付いたのは、女性の多さである。なぜか? そのことに関しては、ツボ錬金ギルドの本部二階にいるルークが教えてくれた。ギルドマスターであるポーリアが就任時に職人装備を後ろの開いたエプロンドレスのようなものに変更し、そのために女性の入門者が増えたとのことである。それは良いとしても、エプロンドレスでは男性が着にくいのではないかと思う。だがそのことに関する答えもルークが持っていた。このエプロンドレス風職人装備は機能に優れており、決して着て悪いものではないとのことだ。

 こんな話はどうでもよいと思う人が大半であろうが、吾輩はこんな風にして組織を理解していき、この者たちの生きた証を残しておきたいと思うのである。

今はそう思っておるが……

「強大な魔物を倒し、世界を救うことだけを考えていては、素通りしてしまうであろう世界の隅を見ていきたい」と、今は思っておるのであるが、思い付きで書いてしまったため、結局一つの組織も調べないままになるかもしれぬのである。

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